広島家庭裁判所福山支部 昭和33年(家)701号 審判 1958年11月24日
申立人 黒川春男(仮名)
相手方 藤波富美(仮名)
未成年者 藤波謹一(仮名)
藤波常二(仮名)
主文
未成年者藤波謹一、同藤波常二に対する親権者を(相手方藤波富美より)申立人黒川春男に変更する。
理由
本件申立の要旨は、未成年者藤波謹一、同藤波常二の親権を行う者は相手方であるが、これを申立人に変更する旨の審判を求めるというにある。
仍つて審案するに、申立人の当審判廷における審問の結果、及び証人黒川智子の証言に、本件申立書に添付の申立人及び相手方の各戸籍謄本並びに京都市○区○○○○町四〇番地平野正治の当裁判所に対する回答書を総合し判断すれば、
申立人は昭和二六年六月○○日申立人の郷里である○○郡○○町大字○○において、相手方と婚姻し、その間に長男謹一、弐男常二の二児を儲け、申立人の父母と共に生活を営んでいたが、相手方と申立人の父母との折合いが悪いため、申立人と相手方とは、昭和二八年八月○○日未成年者等の親権者を申立人と定めて協議離婚を為し、その後相手方は○○市に出て○○○銀行○○支店に就職し生活も安定したので、未成年者等を引取つて養育したいとの理由で、未成年者等の親権者を相手方に変更する旨の審判を広島家庭裁判所○○支部に求め、昭和三〇年二月八日にその旨の審判を得、その審判は同月二五日に確定し、○○市○○町において母子三人の生活を営んでいたが、昭和三一年二月頃申立人も郷里を出て○○市所在の○○○○○○営業所にトラックの運転手として就職し、再び相手方並びに未成年者等との親子四人の生活を始めるに至つた。ところが相手方は○○市高山某に欺されて、約七〇万円の金を高山某に貸し、その金は相手方が○○○銀行○○支店の得意先より借り入れた金であつたためその債務の返済に困り、遂に昭和三二年八月一三日無断家出を為し、同年九月頃○○市○区○○○○町四〇番地平野正治方に食糧受給の手続を完了したとの手紙を最後にその後の消息は不明であること及び未成年者等は現在事実上申立人によつて監護、養育を受けていることが認められる。
叙上の事実から判断すれば、未成年者等は事実上相手方の親権より離れ実父である申立人によつて監護、養育されているので民法第八一九条第六項に則り、未成年者等の親権者を申立人に変更するを相当とすべく、仍つて主文の通り審判する。
(家事審判官 河相格治)